座布団の前に真新しい釈台が置かれました。三遊亭王楽さんの高座です。
今回の【江刺寄席】で、私は王楽さんの演し物だけは知っていました。ネタ出しを頼んだのではなく、これを演りたいので釈台を用意できませんか、と言われていたからです。
王楽さんはまず、来秋に真打ちになることと、次回の【江刺寄席】がその披露公演となることをお客さまに報告しました。会場から拍手が起こります。続いて、週末に「NHK新人演芸大賞・落語部門」の本選があり、(来年は真打ちになるので)今回が最後のエントリーとなるため、ぜひとも大賞を取りたいと、力強く宣言しました。
マクラは合コンのエピソードで、「涙をこらえてカラオケを」に入りました。桂三枝師匠の作ったこの新作落語には、どうしても釈台が必要だったのです。
カラオケが大好きだったお爺ちゃんが、病床で倅の嫁と「銀恋」を熱唱している最中に亡くなりました。それならいっそカラオケ葬をやってやろうじゃないか、という毎度ばかばかしいお噺です。
弔問客はお焼香の替わりにカラオケを歌います。この選曲でひともめするのですが、噺の中で実際に何曲もカラオケが歌われます。
カラオケ用マイクを隠すのが釈台の役目だったのです。それも2本。というのは、嫁とのデュエットでは普通のマイクを、葬儀では白いテープが結ばれたマイクを使うからです。
私は三枝師匠でこの噺を聞いたことがないのですが、たぶん王楽さんは、キモになるカラオケ以外は自分の好きな曲をいくつも織り込んだのでしょうね。だって、三枝師匠が倖田來未の「キューティーハニー」を歌うなんて、想像できません。
お焼香曲(でしたっけ)の最後はお爺ちゃんの親友で、なんと「乾杯」を歌おうとします。反対されても「故人が大好きだった曲だから」と固執しますが、結局あっさりと折れ「サボテンの花」に変更です。
そして‥‥。(サゲは書きません。)
開場前に王楽さんがカラオケを熱唱していたわけが、これでわかってもらえましたよね。王楽さんのカラオケ?とても上手でした。
仲入りです。