旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

連休の読書

松下竜一の「豆腐屋の四季」が(再)文庫化されましたので、入手し読んでみました。書名とドラマ化されたことで、よくある庶民の生活誌と勝手に想像し、読んでいなかった作品です。
松下に興味を持ったのは彼が「狼煙を見よ」や「怒りていう、逃亡にはあらず」など、新左翼の事件に関したノンフィクションを書くようになってからでしたが、処女作に戻って読むことはしませんでした。
豆腐屋の四季」の松下には、その後優れたノンフィクション作家や冤罪事件に取り組む活動家となっていく彼の萌芽を見ることができません。「豆腐屋の四季」が公刊され、体調の問題もあって豆腐屋を廃業し、退路を断ち文筆家になったところから作家松下竜一が誕生したのでしょう。


漱石関連では、ほぼ四半世紀ぶりに江藤淳の処女作「夏目漱石」を再読しました。「漱石とその時代」は何度も読んでいたのですが、漱石論は若書きということもあって、さほど評価していなかったのです。


キリスト教関連の本も何冊か読みました。これも久しぶりの再読となった堀米庸三の「正統と異端」は、前回と違いよく理解できました。
しかし異教徒の私から見ればどうでもいいような些末なことを、数世紀にもわたって問題にしてきたのですね。ローマ法王が何人も殺されてきた(それも内部の人間によって)ことにも驚きました。異端や異教徒の惨殺など、カトリックの歴史は血塗られています。


近松浄瑠璃を数作読みました。初期の歌舞伎が、浄瑠璃の翻案によって進化してきた必然を改めて感じました。
文語文法の勉強も、やっと始めました。六十の手習いです。


この連休は結構本が読めました。まあ、どこにも出かけないのですから、これくらいやらないとバチが当たるというもんです。


豆腐屋の四季 ある青春の記録 (講談社文芸文庫)

豆腐屋の四季 ある青春の記録 (講談社文芸文庫)