旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

ココカラ ミンナガ ミエルヨ。

永井均「マンガは哲学する」を再読しました。
10年前には、論じられているマンガはどれも読んだことがなかったのですが、永井の哲学を述べるための「引用」と考え、それらを手にすることはありませんでした。
今でもこの本をマンガ評論とは捉えていません。ですが、いくつかのマンガをどうしても読みたくなり、購入しました。


松本大洋の「鉄コン筋クリート」に圧倒されました。
引用されたコマの中の主人公たち、シロとクロの風貌が気に入り、まず最初に読んだのです。コミック版ではなく、大きな判型の「All in One」で読めたことも幸いでした。このマンガのもうひとつの主人公、宝町の細部がはっきりと見えるからです。
永井は「ひとコマひとコマがすべて絵画芸術として自立しており、しかもその全体が叙事詩的に統合されている」と絶賛していていますが、まさにその通りで、ひとコマたりとも無駄がなく、克明に描かれています。


シロとクロを論じた永井の文章もよかったのですが、マンガの中の彼らはそれを遙かに凌駕していました。
「シンジツ」も「キボウ」も見えないかもしれないけれど、「ミンナガ ミエル」場所からのエンディングにはほろっとしてしまいました。
いい歳をした私ですが、クロみたいな成長には憧れます。まだ可能かな?


鉄コン筋クリート」、これから何度も読み返すことになるでしょう。
今ごろなによ、と言われそうですが、ほとんどマンガを読んでこなかったことで、たくさんの楽しみが残されていることを、幸せと感じています。


鉄コン筋クリートall in one (ビッグコミックススペシャル)

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