旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

恐怖が記憶を定着させるとしたら

リチャード・パワーズの小説が大好きな私ですが、「ガラテイア2.2」だけは読み終えることができませんでした。
なぜでしょうか。パワーズ自身が主人公だからかもしれません。といっても私小説ではありません。
今、なんとかこの小説に食い下っています。このごろ新しい小説を買っていなくて、読むものがなくて困っていましたので、飢餓感を仲間につけてがんばることにします。


この小説には彼のデビュー作「舞踏会に向かう三人の農夫」のあの写真との出会いが書かれていますが、おそらくはフィクションでしょう。
脳科学と、文章を理解する人工知能の話も出てきますが、この部分に引っかかるところがいくつかあります。たとえばこんな記述です。

ダイアナ(海馬における連合表現形成を研究している脳科学者−引用者注)が後で教えてくれたところでは、親指くらいの前頭葉基底部が海馬をアセチルコリンで浸すときに、記憶が定着するという。(中略)そして液体経路に洪水を引き起こす主因となるものが、恐怖なのである。(84頁)


そのほかに、人工知能があまりにも明晰に教えられてことを記憶することで、自閉症状態に陥ってしまうことなども気になります。
まあ、小説の中での挿話ではあるのですが……。


ガラテイア2.2

ガラテイア2.2