旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

ヴァイオリン・ソナタ K.304

中村文則東京新聞の連載小説『逃亡者』を毎朝楽しみにしています。
昨日は、遠くから「モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第28番第二楽章」が聞こえてくる場面が描かれていました。交通誘導員と自称する不思議な人物が「このヴァイオリンの音色は、おそらくアルマ・ロゼによるものです」と主人公に話しかけます。ロゼはグスタフ・マーラーの妹の娘で、アウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所で「囚人」たちによるオーケストラを作っていました。彼女は1944年にアウシュヴィッツで亡くなっています。優れたヴァイオリン奏者だったそうですが、録音はないはずです。
モーツァルトのピアノ・ソナタと協奏曲なら番号を言われればほぼ思い出すことができます。ヴァイオリン・ソナタはあまり覚えていません。オーギュスタン・デュメイマリア・ジョアン・ピリスによる演奏を聞いてみました。第二楽章はピアノのリードで始まる美しい曲でした。小説の内容からもっと悲しい旋律を連想していましたが、そうではなく、空に消えていくような澄んだメロディーです。
第一楽章に戻してみました。こちらは聞き覚えがありました。ヘンリク・シェリングとイングリット・ヘブラーの盤も聞いてみましたが、この小説にはデュメイの方が向いていました。