旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

陸軍省の別班

話題のテレビドラマ『VIVANT』ですが、「別班」という言葉を意外な本の中に見つけました。ドラマとは全く関係はありません(戦前の陸軍省で使われた組織名なので、かすっていないこともないのかな)。その文章の内容が興味あるものなので引用いたします。
勁草書房が出した三浦つとむ選集(全五巻)の第一巻『スターリン批判の時代』の末尾の文「昔の仕事」にその言葉はありました。選集は三浦の旧稿に本人が解説と回想を添えたものです。「昔の仕事」は回想にあたります。
彼は戦前から1956年まで、謄写版の製版(ガリ切り)で生計を立てていました。
「仕事で面白かったのは、戦争のはじめに、東大前の通称落第横町にあったプリント屋で、陸軍省の秘密組織「戦争経済研究班」(表向きは「主計課別班」という看板をかけていた)から出す(秘)の印刷物をたくさん手がけたことで、製版したのは私を入れて三人だが、校正はみんな私がやった。中には戦争の見とおしを論じて敗北と断じたものもあれば、ヘーゲルを引用して戦争を合理化した著名は大学教授の原稿もあり、反ナチスの書『吸血鬼の経済(バンパイアエコノミー)』の訳本もありました。」(238頁)