旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

民話「カラスのお詫び」

夜、戸を叩く音がしました。眠りかけていた旭村のかずっぺは不承不承に布団から出ました。
「なんだべー、こんな遅くに。オラが早寝だってことを知らねーとこみると、こりゃよそもんだな。」
戸を開けると、カラスが紋付袴姿で立っていました。外は暗いし、カラスも真っ黒なので、目が慣れてやっと正装だということがわかったのですが。
「先日は当方の嫁があなた様を襲って怪我をさせ、本当に申しわけありませんでした。」
「はー、なんだー、あのオラの頭をつっついたカラスはおめーさんの嫁御ちゅうことかね。いかく痛かっただわ。」
「何分にも嫁は初産のうえ、前の日に私が、そのー、キャバクラで遊び遅く帰ったもので、いらだっていてあなた様を人さらい、いえカラスさらいと思い込み、あのようなことをしでかしてしまいました。」
「おーおー、おめーも隅に置けんのー。ま、オラも若いころは吉原に入り浸っておったで、人のことは言えんがの。馬がついてきたりして、おやじにどなられたものじゃ。」
カラスは持っていた風呂敷包みを広げました。菓子折のようなものが三つ入っていました。
「これはお詫びのしるしでございます。こんなものでお許しいただけるとは思いませんが、どうぞお納めください。」
「うんにゃー、気にしてはおらんわ、もう傷もふさがったし。まー、どうしてもと言うのならいただいておくがの。」
菓子折三箱に手を出すと、カラスはそれを引っ込めました。
「この中には卵が入っております。いえいえ、私どもの卵ではありません。細工物でございます。ですがすべては差し上げられません。金の卵、銀の卵、銅の卵、どれかをお選びください。」
王道の三択パターンです。もう答えは決まっています。
「そうかの。オラ清貧のかずっぺと村では言われてるけん、銅の卵でええだわ。ヒッヒッヒ。」
カラスは箱を一つ渡し、丁寧にお辞儀をして帰って行きました。
さて、この銅の卵の中には何が?というところで夢は終わりました(ウソだけど)。


下ネタで落とそうと思ったのですが、朝からそれはまずいんじゃないかと。それにお坊ちゃま、お嬢ちゃまが読んでいるかもしれませんし。
どうしても結末を知りたい人は、袋とじの部分をはがしてお読みください。(って、どこにあるんだよ。)