旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

十字屋楽器店

仲田定之助著『明治商売往来』に懐かしい店の名を見つけました。十字屋楽器店です。
仲田氏は明治三十二、三年ころ、ここで野球のボールとバットを買ったそうですが、「十字屋の産をなした因(もと)になった」のは「紙腔琴という楽器」でした。紙腔琴とは「孔をあけた厚い巻紙」を交換することによっていろいろな曲が鳴らせる、手廻しのオルゴールです。
時が移り、私が十字屋楽器店で買ったのはレコードでした。一階でレコードを、地下では楽器を販売していたのです。楽器の半分くらいは中古品で、私はだいぶくたびれたオベーションのアコースティック・ギターを手に入れました。グレン・キャンベル・モデルで、その後に買った同社の新品のエレアコよりずっといい音がしました。
その後ビルは建て替えられましたが、そこには私の求めるものはありませんでした。