今日は赤穂浪士の吉良邸討ち入りの日ですが、毎年この時期になると聞きたくなる曲があります。
三波春夫の「元禄名槍譜 俵星玄蕃」です。
9分弱の長編歌謡浪曲、作詞と構成は三波さん自身によるもので、聞き応えがあります。NHKの紅白歌合戦でも何度か歌っていました。特に感動的なのはこの部分です。
吉良の屋敷に来てみれば、今討ち入りは真最中、総大将の内蔵之助、見つけて駆け寄る俵星が、天下無双のこの槍で、お助太刀をば致そうぞ、云われた時に大石は、深き御恩はこの通り、厚く御礼申します。されども此処は此のままに、槍を収めて御引上げ、下さるならば有難し、かかる折しも一人の浪士が、雪をけたててサク、サク、サクサクサクサク
「先生」
「おうッ、そば屋か」
いや、いや、いや、いや、襟に書かれた名前こそ、まことは杉野の十平次殿、わしが教えたあの極意、命惜しむな名をこそ惜しめ、立派な働き祈りますぞよ、さらばさらばと右左、赤穂浪士に邪魔する奴は、何人たりとも通さんぞ、橋のたもとで石突き突いて、槍の玄蕃は仁王立ち。
私がこの曲を歌う三波春夫を最後に見たのは、1996年6月14日のNHK・BSの「夢でワイドショー 永六輔の芸能ジャーナル」でした。生放送でビッグバンドをバックにフルコーラス、三波さんは額に汗をにじませながら、老いを感じさせることのないあの艶やかな美声を聞かせてくれました。
私が夢見ていたことがあります。三波春夫と国本武春のジョイントコンサートを木挽町の歌舞伎座で開くことです。
語り物の歴史を深く研究し、自ら説教節や祭文を演じることができた三波さんと、弾き語りを得意とする浪曲界のニューウェイブ、武春さんを同じステージで聞きたかったのです。
2001年4月14日、それは永遠の夢となってしまいました。