旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

浅草はラビリンス

浅草の裏通り

花やしき通りをひさご通りの手前で左に曲がります。
ひさご通りのあたりはかって浅草十二階と言われた凌雲閣があったところです。凌雲閣は関東大震災で倒壊してしまいましたが、多くの文人を魅了したようで数々の文章が残されています。*1
これもなくなってしまいましたが、雷門通りと国際通りが交差するところに、凌雲閣を模した仁丹塔が建っていました。形は似せてありましたが本物よりずっと小さく、色も違っていました。凌雲閣は赤煉瓦造りですが、仁丹塔は空色に塗られていたのです。私のジャズの学校だった「フラミンゴ」はその近くにあります。


さて、やってきたのは瓢箪池の跡地です。ここは以前は通りたく場所でした。昼間から営業している大衆酒場が建ち並び、酔っぱらいが多かったのです。それは今も替わっていませんが、酒を飲むようになったせいでしょうか、嫌悪感はなくなりました。
酒場の中には昼日中から酒を飲んでいる人たちがいます。通りでは、今ではあまり見ることがない千鳥足の人まで見かけました。


凌雲閣の周辺は魔窟と呼ばれていましたし、江戸川乱歩の小説を読むと、瓢箪池のあたりも物騒な場所だったみたいです。それらがなくなった今でも、土地には記憶がこびりついているのでしょうか、禍々しい匂いがこの周辺には漂っているようです。


すしや通りを左に曲がってしばらく行き、雷門通りに出ようと右に曲がったとき、不思議な感覚が襲ってきました。なんだか町が歪んで見えるのです。立ちくらみではありません。空間が歪んでいるように感じられたのです。雷門に戻ろうとしているのですが、田原町の交差点に向かっているように思えてきたのです。


なんとか無事雷門にたどり着きました。
浅草散歩の終点は「神谷バー」です。まだ外は明るいのですが、ここは浅草、ビールとデンキブランでも飲みましょうか。

*1:凌雲閣の精密な模型が両国の「江戸東京博物館」にあります。