旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

ユニークなニート対策

昨日の日本経済新聞朝刊文化欄の「ミュージアム 拓く−私の美術館像」を興味深く読みました。日比野克彦へのインタビューです。


以前、NHKの「日曜美術館」で日比野が一般の人と取り組むワークショップの様子を見たことがあります。面白い試みで、できるなら自分も参加してみたいと思いました。
現代アーティストが作り出すインスタレーションの多くに、私はゴミの山しか見ることができませんでした。いつも思うのは「後片付けをする人は大変だろうな」。バカでかいパラソルをたくさん立てた、たぶん風景を<異化>させようとするインスタレーションでは、作業員が死亡する事故もありました。
しかし、日比野と参加者がダンボールから作り出していくものを見ていると、何か面白いのです。目を見張るような素晴らしい作品ができてくるわけではありません。しかし、できあがったものや作業風景、日比野との会話といったワークショップ全体が、ひとつの楽しい作品になっているのです。
日比野はインタビューでこう話しています。

美術はもちろん学校でも学べるが、学校には同じ年齢の子しかいない。美術館にはいろんな年齢の人がいる。おじいちゃんが丁寧に紙を張り、お母さんが柔らかい線を描くなど、ほかの人の個性を感じながら、自分らしい作品を生み出していく経験は大切だ。

彼は来年、金沢21世紀美術館が行うニート対策のプロジェクトとして、就職も就学もしていない若者たちにワークショップを手伝ってもらうそうです。ワークショップは熊本や鹿児島などで開催されます。
公立美術館がこういった問題にコミットメントしていくという柔軟な発想に、自治体などがこれまでに行ってきた講演会や体験学習などとは違った、広がりのある成果が期待できます。ニートの若者たちをワークショップに参加させるのではなく、手伝わせるというところも実践的です。
日比野の言葉です。

知らない土地で美術に触れ、出会いもあるだろう。金沢に戻ってくるころには、出かける前と違う自分が見えるのではないか。