旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

団扇○○○○

漱石論をあれこれ読んでいるせいか、明治時代の夢を見ました。


旧制高校(たぶん二高)の学生ふたりが夏休みで帰省の準備をしていると、下宿先や近所の人たちからたくさんのお土産をもらいました。ふたりは竹竿に土産の品をぶらさげ、それをかついで故郷に向かいました。鉄道を使わずにかち歩きです。


しばらく歩いていると、結んである荷物がほどけてきました。素人の荷造りですから、いたしかたありません。
包み直していると、数人の村人が通りかかりました。農作業の帰りのようです。
「学生さん、そんな包み方じゃだめだんべ。おらたちにまかせろ。」
村人Aはそう言って、仲間たちと荷物を包み直してくれました。が、荷物の中身にするどい一瞥を投げたことには、学生たちは気づきませんでした。


「この近所に泊まれるところはありませんか?」
学生Qが訪ねました。
「おらたちの家が近所なら泊めてやるんだが、あいにく山ひとつ向こうでな。おう、そうそう、この道を少し行くと坊さまのいない寺がある。泊まるだけなら大丈夫だろうて。」
ふたりは無住の寺で一泊しましたが、朝起きると荷物はすっかり消えていました。


地方新聞の記者である私は、学生たちからの聞き書きの末尾に次のように記しました。
「これが最近巷でよく聞く団扇○○○○であろう。」


団扇○○○○とは、団扇をあおぎながら気安く近づいてきて相手を油断させ、持ち物を盗むという明治時代に流行した犯罪の俗称です。もちろん事実ではなく、今回の夢のオリジナル語です。
ところがこの○○○○が思いだせません。動物の名前で、そいつはひとの獲物をかっさらっていくといわれています。ハイエナじゃなし‥‥。


書いているうちに思いだすだろうと考えていたのですが、ダメでした。思いだしたらお知らせします。