戸井十月氏の「植木等伝『わかっちゃいるけど、やめられない!』」を読みました。本が出たとき、植木さんと戸井氏の組合わせに意外な思いがして、すぐには購入しなかったのです。
いい本です。植木さんの最晩年に丁寧なインタビュアーをした本文はもちろんですが、親しかった谷啓さんたちに、没後彼を語ってもらった外伝もぐっとくるものでした。
大人の友情物語です。6人(後に7人)の個性あふれる男たちが、大きなトラブルもなくグループを維持できたのは、相互の距離の取り方が絶妙だったからでしょう。クレージーキャッツはメンバーが3人になった今も、解散していないのです。
誰もが言うことですが、植木さんの器の大きさにも改めて感心しました。苦労した少年時代のことが詳しく語られているのですが、その経験が、藝能界に身を置きながらも、地に足のついた高潔な人柄を作り上げたようです。
ただ、植木さんのような得難い友人に先立たれると、残された者のつらさは大きくなります。谷さんはこう語っています。
あんまりハッキリした理由がないのに落ち込んだりした時に、あっ、植木屋がいないからだって気がついたりするんです。もちろん、自分自身の老いのせいもありますけどね。こんなはずじゃなかったとか、割と弱いなとか、そういう感じもあるけど‥‥。
植木さんは80歳で亡くなりました。ハナ肇さんたちが60代で亡くなっていますので、決して早すぎる死ではないのですが、私には欠落感がまだ残っています。
- 作者: 戸井十月
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/12
- メディア: 単行本
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