旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

歌武蔵師匠の一言

三遊亭歌武蔵師匠

【江刺寄席】がはねると、出演者を囲んだ打ち上げ会が待ってます。酒好きの私などは、これを楽しみに‥‥(モゴモゴ)。
昨年の【江刺寄席】の主任は三遊亭歌武蔵師匠で、お得意の相撲に関する短い噺をいくつも積み上げ、会場を爆笑の渦につつんでくれました。
出番が終わるまでは厳しい表情だった師匠ですが、打ち上げ会では駄洒落の連発で、スタッフの社員たちを楽しませてくれました。
「『らくだ』も聞きたかったですね」と師匠に話しかけたところ、即座にこんな答えが返ってきました。
「『らくだ』は高いですよ。」


そのときは、それが笑福亭鶴瓶師匠の歌舞伎座などの大劇場で興行した落語会(演し物は「らくだ」のみ)を指したのか、あるいは「演目を指定すると出演料は高くなりますよ」という冗談なのだろうと思い、その真意は聞きませんでした。
ところが、だんだんと師匠の一言が気になってきました。どうも私の理解は間違っているように思えてきたのです。


昨年の歌武蔵師匠が評判となり、【江刺寄席】の整理券を求める人が増えていると知り、私はやっと師匠のことばの意味がわかりました。


「【江刺寄席】のお客さまは落語好きの方ばかりと限りません。噺家の私には一目でそれがわかります。『らくだ』は確かにいい噺ですが、ここにいるお客さま全員がそれを楽しめるかといえば、私にはそうは思えません。それよりも、心の底から笑っていただき、今日は本当に楽しかったと感じて、会場を後にしていただきたい。そうすれば、来年もこの寄席に来たいと思うはずです。だから、『らくだ』を演ると(席亭さんにとっては)高くつくことになりますよ。」


歌武蔵師匠、次回は「らくだ」をお願いいたします。それまでに、私たちは【江刺寄席】を継続することによって、落語をこの町に根付かせておきます。