旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

原節子

原節子の夢を見ました。
高校時代の友人からその名前を聞くまで、彼女の存在さえ知らなかった私ですから、ファンではありません。それがどうしてまた、という思いです。


夢の中の原節子は、私の伯母(叔母)でした。
夏休みに南の島にある田舎に行った十代の私は、伯父から叔母が女優をやめて帰ってきていることを知らされるのです。現実には、南の島に親戚はいませんし、行ったこともありません。
伯母が原節子であることを知った私に訪れたのは困惑でした。伝説の大女優が身内であったことは、ミーハーな私には嬉しいはずなのですが、なぜか夢の中では困ってしまっているのです。
そのくせ写真を撮りたくて、彼女にカメラを向けますが、背中しか見せてくれません。原節子が出てきたのはこのシーンだけで、結局私は彼女の顔を見ることができませんでした。
そこに伯父が、納屋の中にこんなものがあったよと、小津監督のピケ帽を持ってあらわれました。小津監督のトレードマークのあの帽子です。
短い夢でした。


夭折した父の姉は、写真でしか知ることがありませんでしたが美しいひとでした。その写真も二枚しかなく、ともに彼女は和装で、夭折を予感していたかのような儚げなまなざしをしていました。
ある詩人の本の中に、母親に抱かれた生後間もない彼の写真が収められていました。彼の母は、一目で憧れてしまうような女性でした。
あまりにも美しい身内を持った男は恋愛ができるのだろうか、と馬鹿なことを考えた時期がありましたっけ。