兵藤裕己の「<声>の国民国家」を読んでいます。出版されたときに読みたいと思っていたのですが、講談社学術文庫版が出て、やっと入手することができました。
副題は「浪花節が創る日本近代」。浪花節の創生期を論じたものですが、桃中軒雲右衛門に多くの頁が割かれています。
願人坊主の門付藝であるチョボクレ・チョンガレが浪花節の元になったことは知っていましたが、それが全国に伝播し、青森ではヂョンガラになったという指摘には興味があります。
が、今日書きたいのはこの本の表紙についてです。
- 作者: 兵藤裕己
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/10/13
- メディア: 文庫
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一度見たら忘れられなくなる風貌でしょ。彼(彼女にも見えないことはありませんが)が桃中軒雲右衛門なのです。
私はこの写真を見たことがありましたので驚きませんでしたが、こんな表紙の本が置かれていたら、誰でも手にとってみたくなるのではないでしょうか。
「この唐服を着たインディオは誰だ?」ってね。
子どものころ、三波春夫先生(彼だけは先生と呼びたいのです。あっ、もうひとり、呉智英先生がいました。)の劇場中継で彼が雲右衛門を演じたのを見たことがあります。立身出世の物語で、幼心にとても感動したものです。
三波先生の雲右衛門はきれいな総髪(私は「そうはつ」と読んでいますが、池上正太郎は必ず「そうがみ」とルビを振っていました)でしたが、写真の雲右衛門は汚れて縮れた長髪を、無造作に後ろになでつけただけです。
それに黒っぽい唐服。先生のように煌びやかな着付袴ではありません。
しかし、よく見ると実にいい顔立ちをしています。
鼻、口ともに実に形がいい。目は細くて小さいのですが、聡明そうな輝きがあります。
桃中軒雲右衛門、会いたかった人です。