江藤淳の「漱石とその時代」(新潮選書)を読んでいます。第五部までありますが未完の作品です。
第一部と二部はほぼ同時に出版され、十八歳の私はすぐに購入し、むさぼるように読んだことを覚えています。その本は手許にありません。持っているのは数年前に五冊まとめて購入した、装丁の新しい本です。古書店で署名入りの第二部を見つけ、買ったこともありました。
第三部はなかなか着手されす、私は一部、二部を何度も読み返しました。が、今回読んでみて、どこを読んでいたのかと呆れる始末でした。
「道草」にある漱石の子供時代の叙述が、事実に即したものであることに驚きました。また、あのような記憶を掘り起こす、漱石という作家の真摯さにも打たれました。恐ろしさも感じたのですが。
荒正人の「漱石研究年表」(旧版/集英社)も広げながら、この偉大な作家の足跡をしばしたどることにいたします。