旭亭だより

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夏目漱石『道草』

今まで漱石唯一の私小説的作品とありきたりの感想ですませていた『道草』に引き込まれました。
『道草』は1915年に書かれましたが、1903年から翌年にかけてのことが書かれています。荒正人著の『漱石研究年表』(集英社/1974年)のその時期をみると、小説に出てくる出来事が実際にあったこととわかりますが、取り上げなかったことも多く、明らかな取捨選択の基準があったように考えられます。
主人公健三が取り上げることになった衝撃的な三女の出産は1903年11月3日で、年表にはそのようなことがあったのかは書かれていません。しかし不仲から妻を二度実家に帰らせたことなど、妻に関することは克明に小説に書いているのですから、おそらくは事実なのでしょう。
マルクス漱石埴谷雄高など、十代の後半に読んだ本に戻っていますが、理解はあの頃より少しは深くなっているようです。とても嬉しいことで、それがずっと続けばいい生き方ができたといえそうです。そのためにはしっかりと長生きしなければなりません。