旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

一番覚えていないのは自分のことかも

倉橋由美子を読みながら、高校生時代のことを思いだしていました。
多くの人がそうなのでしょうが、最近のことは忘れても昔のことはよく覚えていると、自分の記憶に変な自信がありました。
確かに四、五十年間の出来事や会話を、そのときの情景やことばの端々までも鮮明に思いだすことはあります。見る聞く以外にも、友人たちの性格までもしっかりと把握していたような気もします。
しかし、本当にそうなのかと疑問を抱くようになってきました。思い出の中の自分は、今現在の自分なのではないだろうかと。
つまり、そのときの自分は、自分であることによって、無批判に現在の自分を過去に投影したものになっているのではないかと考えるようになってきたのです。
知識も経験もほとんどなかったけれど、未来を夢見、理想を追う私がそこにいて、友人たちもそのような私を見ていたはずです。その視点は、私が過去を振り返るときに欠けていたものです。
今の自分の不甲斐なさを知っている私は、昔の自分にも点が厳しくなります。でも、それは記憶を歪めてしまうことになるのではないでしょうか。
そのころを知る友人と会えればいいのですが、現在は誰ひとりつきあいがありません。