旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

十六歳の読書

倉橋由美子の初期の小説を一日中読んでいました。彼女と大江健三郎の作品が、私の触れたはじめての同時代文学でした。
高校一年のときです。学校の図書室に置かれた、確か講談社の文学全集の中の一巻に、名前だけ知っていた大江を見つけ、それを借りました。
その巻はふたりで一冊だったのか、倉橋由美子もそのときに読んだ記憶があるのです。倉橋については何の予備知識もなく、いきなり作品を読んだのです。
衝撃を受けたのは倉橋の方でした。「貝の中」か「パルタイ」、あるいはどちらもが収録されていたのでしょうか。カフカさえ読んでいない高校生には、驚愕の世界でした。
でも、その後作品を追いかけたのは大江の方でした。図書室には倉橋の本がそれ以外なかったのです。大江は、新潮社の全作品集があり、それをむさぼるように読みました。
倉橋の小説は、書店で見かけるたびに集めていきました。「暗い旅」が再刊され、夢中になって読んだものでした。
そのころ、サルトルの著作も読みはじめたのですが、それは大江の影響ではなかったような気がします。