旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

近藤ようこ『死者の書』

待ちに待った近藤ようこの『死者の書』の上巻を手にしました。
なんて書くと、以前からの近藤ファンと思われそうで、気が引けてしまいます。ファン歴はわずか三ヶ月です。たまたま買った『五色の舟』に驚愕し、書店で近藤作品を見かけるたびに購入するようになりました。
その中の一冊に折口信夫の『死者の書』に取り組んでいると書かれていました。あの『死者の書』がこの人の手によって絵になる、なんと楽しみなことではありませんか。
私が『死者の書』を初めて読んだのは高校生の時でした。『古代研究』にまったく歯が立たず、小説ならばと読んでみたのです。
誰でもそうであるように、冒頭の文にがっしりと掴まれてしまいました。死者が蘇る様子がありありと目に浮かんだのです。いつのことなのだろう。そして、耳面刀自という女性はまだ生きているのであろうか。小説はそれには答えず、まったく別の物語に変わります。
近藤の『死者の書』は原作に忠実です。彼女の丁寧な仕事は、時代考証にも及んでいるはずですから、私は描かれた世界をそのまま受け入れるだけです。
ですが、二上山の向こうにあらわれるあの姿には心が震えました。