旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

祠の神

柳田國男の『石神問答(しゃぐじもんどう』を読んでいて「祠(ほこら)の神」ということばに出会いました。祠の神とは何か。柳田はこのように書いています。
「村々にはすでに一つ以上の正式の氏神鎮守神の御社があって、住民は協同してその祭に奉仕しているのに、どうしてそれ以外に別に数々の小さな祠ができているのか。社と祠との神々はもとから類を異にした信仰であったのか。ただしはまた単なる段階の差であって、固定と公認にとによって次々と格を高め得るものであったのか。」
『石神問答』は明治43年(1910年)に刊行された柳田の二冊目の著作です。そのすぐ後に『遠野物語』が出版されます。引用した文は昭和16年(1941年)の再刊時に書かれた序文で、問いに続く文を柳田は「現在はいずれとも考えられ、まだはっきりと解を下し得た人がいない。」と結んでいます。
近所に変わった名前の祠があることを知りました。何を祀ってあるのか気になり、行こうか行くまいかと迷っているときに読んだのがたまたま『石神問答』でした。そのようなものを「祠の神」と呼ぶのかと納得したのです。
その祠にはまだ行っていません。古いものではなさそうだからです。近代の郷土史を調べることは、よほどの覚悟がなければやるべきではないと私は考えています。それに関わった人、その人の縁者たちが現存しているのがその理由です。