どんなに実際の私と違っていても、夢の中で私は私でした。外国語が堪能で、抜群の運動能力を持ち、ルックスもいい、そんな私も夢の中では存在していたのです。改造人間にされたり、ホームレスになってしまったこともありましたが。
でも、女性になった私や、動物の私は出てきません。また、夢の中の私に名前がないことはしょっちゅうでしたが、他の名前を名乗ることはしません。別人になることはなかったのです。
昨日見た夢で私は森鴎外になっていました。画像はモノクロで動きはぎこちなく、古い無声映画のようでした。でも、私が鴎外を演じているのではありません。鏡を見ると、立派な口髭を生やし軍服を着た、見慣れたあの顔がありました。
外出時には馬に乗らず、手に入れたばかりの自動車を使いました。運転はめちゃくちゃ下手でしたが、道路には走る車はなく、なんとか目的地のホテルにたどりつきました。玄関でベルボーイにキーを渡し、自分では車庫入れはしません。パーティー会場に行き、話しかける人たちを無視し、あれこれひたすら食べていました。それが目的で来たようです。
腹がくちくなると、仕事には行かず、家に戻りましたが、ペンを持つことはありません。何もしない森鴎外でした。