旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

真部一男

昨日の東京新聞夕刊の月刊掌編小説欄は藤谷治の「絶局とリアル」でした。将棋の知識のない私でも知っている藤井聡太九段の名があり、ここに書かれている二つの対局は事実なのだろうと思いましたが、わずか三十三手目で終わった対局と、その翌年に別の棋士同士の対局の三十三手目がまったく同じ局面になり、三十四手目は前年の対局で投了した真部一男(まなべかずお)八段がわけあって指さなかった手であったなどということはあり得ないから、これは棋士名も含めて創作で、むしろその方がおもしろいと考えるに至りました。
実話でした。小説にも書かれていますが、村山慈明四段と大内延介九段の対局は真部八段の通夜の日に行われていたのです。真部八段がその手を指さなかったのは、指せば豊島正之四段は長考に入り、自分の体調からそれを待つことができないと考えたからでした。
真部八段は私と同じ1952年生まれで、55歳で亡くなりました。