赤胴鈴之助の夢を見ました。正確には「少年画報」に掲載されている「赤胴鈴之助」を読んでいる夢でしたが‥‥。
私は「少年画報」「少年」といった子供向けマンガ月刊誌の黄金時代に育ちました。そして「赤胴鈴之助」は、夢中になって読んだ初めてのマンガだったのです。
「少年画報」には「まぼろし探偵」と「ビリーパック」という探偵ものの傑作も掲載され、どちらも面白かったのですが、チャンバラごっこが大好きだった私には、一番はやはり「赤胴鈴之助」でした。
どのくらい熱中したかというと、赤胴鈴之助が活躍する世界が現実のものと思いこんでしまったほどなのです。ですから、自分もいつかは親元を離れ、剣術修行に出かけなければならないと決めていました。
その覚悟ができた日、母に月代を剃りちょんまげに結って欲しいと頼みました。これ、冗談ではなく、何日も真剣に思い悩んだ末の決断だったのです。
そのときの母の呆れ顔はいまでも忘れることができません。
「おまえ、あれはマンガの中だけのことなんだよ。今どき、ちょんまげを結って刀を差している人なんて、どこを探してもいません。(ここまでバカだったとは思わなかったわ。この先、どうやって生きていくんだろうね、この子は‥‥。)」
ですから、私はドン・キホーテことアロンソ・キハーナを笑うことができません。いっそ、誰かの真似をしてこう宣言してしまいましょうか。「ドン・キホーテは私だ」と。