その表紙を見ると思わず再読してしまう本が何冊かあります。橋本治の「虹のヲルゴオル」もその中の一冊です。
この本は映画の女優論の体裁を取っていますが、作品論でもあるだけでなく、女性論、人生論としても読めるというすぐれものです。
私はジューン・アリスンと「グレン・ミラー物語」を取り上げた「生きていく準備をなさいなさい」の部分が特に好きなのですが、これを評価する文章はよく見かけます。
良妻賢母の典型のようなアリスンが、地のままに演じたようなミラーの妻、ヘレンを本当のロマンチスト(この言葉にも注意が必要です。だってヘレン自身は「あたしってロマンチックじゃないのよね」と言っているのですから)にしてしまう、橋本の驚くべき手際が鮮やかにあらわれた一章だからでしょう。
橋本治は私にとって最も難解な文筆家のひとりです。一見読みやすい文章なのですが、何を主張しているのかがわかりにくいのです。でも腰を据え、じっくりと読み解くと、ユニークとしか言いようのない橋本の世界に分け入ることができます。
「虹のヲルゴオル」を読むたびに、取り上げられている映画のDVDを集めたいと思ってきたのですが、DVDは収集しないといつの間にか自分で決めてしまっていて、それができずにいました。
が、「俺たちに明日はない」だけでも欲しくなり、アマゾンで探したところ、DVDの価格が大幅に下がっていることに今さら気づき、そのほかの作品も衝動的に注文してしまいました。
13作品すべては集められなかったのですが、DVDはしょっちゅう再発されているようですから、年内には完全制覇も可能でしょう。
さっき、「俺たちに明日はない」を見ちゃいました。