旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

路上の商い - 手動式のメリーゴーランド

東京の下町に住んでいたせいか、子供の頃にいろいろな物売りを見ることがありました。今でもわずかに残っている曳き売りの屋台の食べ物屋はもちろん、懐かしの風景としてよく紹介される羅宇屋(らおや)や金魚屋、爆弾あられなどがありましたが、他の土地にはなかったのではないかと思われる不思議な商売もやって来きました。
手動式のメリーゴーランドと書くと、本物から「一緒にしないでくれ」と抗議されること間違いなしの代物がありました。自転車が曳く台車の上に、古びた乗り物を数台取り付けた木製の円盤が載せられています。もうおわかりでしょう。おじさんの口上にのせられ、乗り物に乗る子供がいると、彼は手で円盤を回転させるのです。菓子を売り、買った子を乗せるのではありません。料金を取って乗せるのです。
一度だけこのメリーゴーランドが動いているのを見たことがあります。おじさんは世界の国々の名前を読み込んだ、御詠歌のような節の歌を歌っていました。メリーゴーランドは世界一周のための乗り物だったのです。