旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

イスラム史を読んでいた人

タミム・アンサーリー著/小沢千重子訳『イスラームから見た「世界史」』(紀伊國屋書店/2011年)を再読しています。
いろいろとお世話になった古書店主がいました。私は売る一方の客でしたが、店に寄ると椅子を勧め、茶碗になみなみと酒をつぎ、出してくれました。肴は本の話で、空けるとすぐについでくれます。甘えてはいけないと、二杯目を飲み干すと帰るようにしていました。
店主はいつも本を読んでいましたが、失礼だと思い、書名は問いませんでした。ただ本文の組み方から、専門書であろうとは察していました。珍しく店主の方から何を読んでいるのか、教えてくれたことがあります。
「最近、イスラム史の本を読んでいるんです。知らなかったことがあまりにも多くて、驚いてばかりいます。」
店舗は持たずに目録だけで売る古書店の準備をしている友人がいました。彼に店主を紹介しました。二人はすぐに親しくなり、私が間に入る必要はなくなりました。友人は店主からのアドバイスに感謝していました。
友人は絵を描きます。店主はその才能に感心し、趣味の延長のような古書販売より、そちらに力を注ぐことを望んでいました。その頃、私の生活環境が変わり、二人と会うことも間遠になりました。店主が亡くなったことを知ったのも、暫くしてからでした。