旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

Cm のアルペジオ

その曲を初めて聞いたときのことを、鮮明に思い出せる音楽があります。
たとえばジョン・コルトレーンの「マイ・フェイバリット・シングス」。17歳の秋の夕方、浅草のジャズ喫茶「フラミンゴ」、ソプラノサックスというものを知らなかった私は、その曲がオーボエで演奏されていると思ってしまったことなど。


その歌が流れていた時代に連れ戻してくれる音楽もあります。
昨日、帰宅途中にウォークマンから聞こえてきたのもそんな曲でした。


ミュートしたギターの Cm のアルペジオでその曲は始まります。ギターの音には軽くディレイがかかっていますが、当時はエコーと言っていたのかな。
17歳の春ごろ、その曲はラジオやテレビで流れ始め、あっという間にヒットチャートを駆け上がっていきました。あのころの空気にぴったり合った倦怠感漂う哀しい旋律。
ただの流行歌ではなく、それは時代のバックミュージックのように私には感じられました。多感な時期が私にもあったのです。*1


ラジオやテレビに接することがほとんどなかった私は、その新人女性歌手の容姿を知らず、歌詞もうろ覚えでした。歌詞はそれでもよかったのです。なにせその曲の前半には言葉がなかったのですから。


なんだかもったいぶった書き方になってしまいましたが、もうその曲名はわかりましたよね。
由紀さおりの「夜明けのスキャット」です。

*1:その年は私の生活に大きな変化があり、12月には父が亡くなりました。