旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

思い出だって財産さ。

昨日書いた「夢の浮橋」は、Tさんと待ち合わせをしたときに読んでいたんじゃないかな、と遠い昔のことが思い浮かんできました。37、8年前のことです。
待てよ、ちょっと違うな。あのとき読んでいたのは、「夢の浮橋」ではなく「反悲劇」だよ。判型が大きかったもの。
Tさんは黄色い星がプリントされた白いTシャツを着ていたから、夏だったのかな。スカートは紺だった気がする。そして、その日がTさんと会った最後の日でもあったんだよな。


Tさんというのは高校時代の友人です。昨年の1月の「旭亭だより」に書いた、六義園でデイトした女性でもあります。(そんなの誰も覚えていないって。)
Tさんは読書家で学校の成績もよく、真面目な人でした。早い話、私とは対極的な人だったのです。
そんな人が、なんで私なんかと付きあってくれたのか、実は今でもわかりません。恋愛感情は、お互いになかったはずですし‥‥。いくつかその理由を考えたこともあったのですが、そんなのどうでもいいや。
Tさんは(私にとって)相手が女性とは意識せずに話ができる唯一の女性でもありました。でも、彼女がボーイッシュなルックスをしていたわけはありません。
それはたぶん、話すこと自体が楽しかったからでしょう。どんな話題をふっても、彼女は真剣に応えてくれた。それが、杓子定規や、月並みや、奇をてらった意見ではなかった。土曜日の午後なんて、何時間話しても飽きることがなかったっけ。
高潔な人でした。ユーモアもありました。「こんな人がいるんだもの、世の中まだまだ捨てたもんじゃない」と何度思ったかわかりません。
会えたことだけで嬉しいし、思い出だけだって今でも十分な財産になっています。


なんだかTさんが夭折したみたいな書き方になっちゃったけど、そんなことはありません。私があんまりいい加減な人間なので、さすがの彼女でも我慢ができなくなって去ってしまったのだ、と想像しています。
キヨシローの「石井さん」を聞いていると、Tさんと石井さんが重なって見えてきます。


Memphis

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