旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

漱石の文章はまあいいかげんなものであります。

この土日、お酒を飲まずに過ごしました。前の週は土曜日に外で飲みましたので、酒ありの休日でした。
やればできるんだね、というよりは飲みたいという気持ちが湧いてきません。


禁甘、節酒したからといって、それ以外は以前と変わらない生活をしています。鰯の頭を拝んだり、「人は生かされているんだ」なんて謙虚になったりはしていませんので、ご安心ください。


「最近になって、人は生きているのではなく、生かされていることに気づいたよ」ということばを、ふたりの知人から聞かされたことがありました。いずれも勝手な生き方をしてきた奴らでしたので、「けっ、利いた風なことをぬかすんじゃねえや」という感想しかありませんでした。


「利いた風な事をぬかす野郎だ」という表現は漱石の「坊ちゃん」の中に出てきますが、東京の下町の常套句でもあります。
「もとより鴎外は文章家としては漱石にまさること数等である。」と江藤淳は「『道草』と『明暗』」(新潮文庫「決定版 夏目漱石」に所収)で述べています。
では漱石はというと「文章はまあいいかげんなものであります。(略)会話も基本は江戸の町方の会話で、『ひ』と『し』の区別のつかないような人物がぞろぞろ出て来る。」だそうです。
下町の人間はそれだけでなく、「い」と「え」の区別もつきません。


江藤淳の「夏目漱石」は高校生のときと、二十代のころに読んだことがありましたが、それほど印象には残りませんでした。「漱石とその時代」には感心したのですが、それによって処女作に再度目を通すこともなかったのです。
昨日、購入だけはしてあった「決定版 夏目漱石」をふと手にし、目から鱗の思いがいたしました。新しい漱石論ばかり追いかけていたことを反省しています。
(ありゃ、謙虚になっちゃった。まずいなー。)


夏目漱石―決定版 (新潮文庫 (え-4-2))

夏目漱石―決定版 (新潮文庫 (え-4-2))