旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

松岡正剛「白川静」

私は白川静の著作の、いい読者ではありません。関心はあったので、十数冊ほどですが本は持っています。ですが、完読できたものは半数もありません。
字書三部作のうち「字統」と「字訓」は購入しましたが、ほとんど使わずに(読まずに)売ってしまいました。


なぜ関心が持続しなかったのでしょうか。
それは白川の学問が、批判不可能なものだったからです。
漢字の源をたどることが彼の学問の中心にありましたが、それは語源と同じように「そうとも言える」としか私には思えませんでした。ただ、語源については諸説紛紛ですが、漢字のそれはほとんど先例がありません。


松岡正剛の「白川静」(平凡社新書)を読みました。白川についての初めての入門書だそうです。白川の主要な著作は平凡社から出版されていますから、読書案内も兼ねているのでしょう。


松岡については、博識な読書家というイメージを持っていました。出す本の書名がどれもそんな感じですからね。それと編集者であったこともなぜか知っていました。そのくせ、著作は読んだことがなかったのですが‥‥。
ほら、名前が角張っているでしょ。私はそれだけで敬遠したくなっちゃうんですが、これは彼の責任ではありません。


白川静」はNHK教育テレビの番組から派生した商品で、著作と言っていいのか迷ってしまうものです。おそらくテレビで語ったことを編集して、手を加えたのでしょう。
白川の生涯と彼の著作の簡単な紹介からなっていて、新書にありがちな作りとなっています。目新しいことは書かれていませんので、白川の読者は手にする必要はありません。


あとがきの最後の部分で笑ってしまいました。そこには呉智英先生がインタビューした白川のことばが引用されています。
なぜ笑ったのか?この本の203頁に「すべからく」の誤用があるからです。松岡は呉智英先生の軽蔑する<すべからく人間>だったのです。
このような方が編集工学研究所所長を名告っているのですから、「すべからく」に限らず、おかしなことばづかいの本が後を絶たないはずです。
しかし、白川静についての本でこれはないよな。