旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

御徒町

アメ横、S君の家の近所で

昨日は古い友人と会うため、上野に出かけました。
待ち合わせ場所は鈴本演芸場の前です。乙でげしょ。


JRを、上野ではなく御徒町でおりました。寄ってみたいところがあったのです。
私の通った高校は御徒町駅の近くにありました。私は都電で通学していたのですが、省線、じゃない国電を使う友人が多かったので、御徒町界隈にはよく来ていました。


友人のS君の家はアメ横にありました。家業は菓子問屋で、ご両親とお兄さんたちがいつも忙しそうに働いていました。彼は歳の離れた末っ子だったのです。
彼の部屋は店のあるビルの上にあり、とても広く、窓からは摩利支天の境内が間近に見えました。


学校から近い彼の部屋や友人たちの溜まり場でした。部屋の真ん中にある卓の上には、いつも菓子が山盛りになっていました。
お母さんがお茶の用意をしながら、「なにもお構いできないけれど、お菓子だけはたくさんあるからね」と笑顔で話しかけてくれましたっけ。
私は何度かその部屋に泊まったことがあります。いつも賑やかなアメ横も、さすがに夜も更けると静まりかえり、国電の通る音と摩利支天の鐘の音(ね)が、なんだか遠いところに来ているような、センチメンタルな気持ちにさせてくれました。


S君のニックネームは「怪物くん」でした。小柄で、笑うと口の周りに深い表情皺が出る彼の顔が、怪物ランドの王子様にどことなく似ていたのです。彼と親しかったやや太めの友人は、フランケンならぬヒマンケンと呼ばれていました。


菓子問屋は食堂などに変わっていました。ビル自体は兄弟の誰かが継いでいるはずですから、彼の消息を聞くこともできたのでしょうが、私はそれをしませんでした。


怪物くん、元気かい?