旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

亀山訳「悪霊」はちょっとね。

亀山郁夫訳「悪霊1」(光文社古典新訳文庫)を読みました。
賛否両論のある亀山訳「カラマーゾフの兄弟」も読んでいるのですが、そのときはさほど訳文は気になりませんでした。(亀山訳「罪と罰」も購入しているのですが未読です。)が、「悪霊」の翻訳にはついていけませんでした。
私はマスターしている外国語がひとつもありませんので、誤訳かどうかは判断できません。ただ、いい翻訳かどうかは、訳者の日本語の表現能力によるところが大と考えています。


亀山訳「悪霊」には期待していました。私が彼のドストエフスキーに関する文章を始めて読んだのは「『悪霊』神になりたかった男」(みすず書房)で、それは結構おもしろかったからです。それ以前に読んだ亀山の本は「ロシア・アヴァンギャルド」(岩波新書)だけで、彼が文学を論じるとは思っていなかったこともあるのでしょうが‥‥。


「悪霊1」の地の文は、まあ読めたのですが会話の部分にはびっくりしました。じじいが時代遅れの若者ことばを使って「今風のわかりやすい翻訳だろ」と悦に入っているとしか思えません。
口直しに江川卓訳(新潮文庫)を読むことにしました。何度か読んでいるのですが、訳文に古さはいささかも感じられません。私にはこれで十分です。
十代のころには米川正夫訳に苦労したこともありましたっけ。江川卓原卓也両氏の翻訳にはお世話になりましたが、おふたりともお亡くなりになってしまいました。