旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

こんな老人になれたら

先日、まだ買っていないと書いたポール・オースターの「ブルックリン・フォリーズ」(柴田元幸訳/新潮社)を入手し、読み終えました。オースターとは思えない心温まる小説で、ある面で戸惑い、彼の初期の作品「幽霊たち」(新潮文庫)を読み直してしまいました。
がっかりしたのではありません。素直に感動しました。また知的刺激も受け、小説を読む楽しみもたっぷりと味わいました。これから何度も読み返す小説となることでしょう。
語り手であるネイサン・グラスが物語の中で還暦を迎えることも、同じ年齢である私に親しみを感じさせてくれました。彼は保険会社に長く勤めていたのですが、肺がんの手術を機にリタイアし、生まれ育ったブルックリンに帰ってきた無神論者のユダヤ人です。離婚もし、家などを処分しましたので、お金には不自由せずにアパートで気ままな生活を送れるのです。
ブルックリンは、私などには移民の多い貧乏人の街というイメージがあるのですが、現在では高級住宅街になっているようです。ニューヨークでも地上げがあったのね。
自身の失敗談などを綴りながら隠遁生活を送ろうとしていたグラスですが、甥との出会いから数々のトラブルに遭遇することになります。そしてそれらに、果敢に挑んでいく姿が実に格好いいのです。決して力まず、深い人間観と知識を武器に、彼はしなやかに戦います。
いいなー、こんな老人になりたいなーと、心から思ってしまいました。


ブルックリン・フォリーズ

ブルックリン・フォリーズ