旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

幸せな夢

各駅停車しか停まらないような小さな駅の前に高校があり、五人の男女がそこから線路沿いに歩いていました。二十歳前後で、その学校の在校生もいるのかもしれませんが、明らかに年長の人もいます。四人は私と実際の知人で、一人キムラくんだけは架空の人物です。彼は人気俳優ですが同じ名字の人ではなく、志尊淳くんに似ています。すれ違う人はみんな「あっ、キムラくんだ」と声をあげ、握手を求めたりします。
私たちは踏切を渡り、店のまばらな商店街のはじにあるしもたやに入りました。五人のうちの唯一の女性の家です。やさしそうな彼女の祖母が迎えてくれました。
「キムラくん、久しぶりね。ドラマ欠かさず見ていますよ。」
私たちはお茶とお饅頭でひと息つき、また外に出ました。菜の花が満開で、いい陽気です。歩きながら私は「これを幸せっていうんだろうな」とうっとりとしていました。何かの話題で盛り上がっているわけではなく、むしろ黙りがちです。でもはちきれそうに幸せなのです。
実在する三人とはそれほど親しかったわけではありません。知りあったのも中年になってからでした。夢から覚め、何を幸せと感じたのだろうかと考えてみましたが、まったくわかりませんでした。