旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

宇野千代『おはん』

岡本かの子を読もうと手にした文学全集の一冊が、宇野千代との二人集でした。宇野の小説は一度も読んだことがありません。表題は知っていた『おはん』を読みました。
驚いたことに宇野は、戦後この作品以外にめぼしいものは書いていないようです。
おはんは語り手の前妻の名です。表題にしたくらいですから、さぞかし数奇な生き方をしたのだろうと読み進めましたが、まったく違っていました。影の薄い女性です。
この小説の文章は魅力的です。中年男性のしゃべりことばで書かれています。東京育ちの私には関西弁であることしかわかりませんが、とても細やかに書き記されていますから、そちらで育った人には作品の舞台がどこかはすぐにわかるはずです。宇野は山口県で生まれています。
次は『色ざんげ』を読むことにします。